第143回「 産学官交流 」講演会(静岡農業高校)報告 

 

 

主催:静岡市清水産業・情報プラザ(指定管理者: 静岡商工会議所)

共催:新産業開発振興機構、静岡県農業高等学校校長会 


第143回産学官交流講演会は静岡県立静岡農業高等学校のご協力をいただき、静岡農業高校生物工学部による発表、スマートブルー株式会社による発表、静岡県立大学食品栄養科学部谷教授による講演があった。

 

 

 

静岡県立静岡農業高等学校 生物工学部

『 在来作物を次世代へ ~静岡市の「種子・植物バンク」を目指して~ 

 

静岡農業高校生物工学部では駿河区大谷の在来作物「かつぶし芋」の保護活動を通し、静岡市の「種子・植物バンク」を開設し、在来作物の保存をしている。静岡県では在来食物が220種類あると言われている。しかし、現在では栽培されることが少なく、多くは品種改良されたものを食べている。静岡市の農家さんと交流する事で、在来作物の栽培、種取りが大変でやめる農家さんが増えていることを知る。昨年から引き続いているこの事業は、今年度は在来食物を栽培し、種を取り、遺伝子をつなぐ「種子・植物バンク」の設立をした。校内圃場で採った種は発芽率が低かったため、在来3種を培養、培養がうまくできなかったため、緑あずきの井川の在来種と学校の圃場内で採った種を培養し発芽率の違いを研究。井川の種子は100%の発芽率、校内圃場の種子は発芽率10%となった。又、校内圃場で栽培した4品種は収穫量が少なく、調査した結果、肥料過多が判明、肥料が少ない方が適していると判断した。在来作物をPRするために園児、小学生を対象とした講座を実施。又、かつぶし芋を水耕栽培し、イラストを用いて管理方法を伝えた。又、栽培方法だけでなくSDGsとの関連性も伝える講座を実施した。講座前はほとんどの小学生は在来食物に関して知らなかったが、講座終了後は90%以上が興味を持ってくれ、食べてみたい、栽培してみたいとの回答であった。中学生では在来作物を知っているが18%、講座後100%が興味を持ってくれた。結果として、在来作物はほとんど知られていないが、きっかけがあれば興味を持ってくれる事が分かった。在来作物の味を知ってもらうためにモンパルナスと共同でコロッケパンを製造・販売。1,024個販売し在来食物を知ってもらうことができた。静岡市の種子・植物バンクとして農家さんの希望に応じ、在来作物の栽培を継続し、組織培養をもちいて種子の保存に取り組む。又、将来、在来作物を栽培する人材、食べる人を増やしたいと思う。

 

 

 

スマートブルー株式会社 コンサルティング事業部 アグリビジネス課 ディレクター 浅井 裕貴氏

『 スマートブルーの営農型太陽光発電の展開 

 

スマートブルーでは太陽光発電による再生可能エネルギー事業と営農型アグリ発電事業中心のアグリビジネス事業を行っている。営農型太陽光発電は農地に支柱を立て上部空間に太陽光発電設備を設置、農業生産と発電を共有する。営農型太陽光発電の導入状況は2012年の102件から2019年の3,474件となっている。施行事例としては水稲、カボチャ、レモン、落花生、サカキ、ブルーベリー、シイタケ、イチジクなどがある。大学との共同研究、各種団体とのコンソーシアムに参画いている。自社農場ではブルーベリーの溶液栽培、サカキ、葉物野菜を栽培、販売している。発電した電気は蓄電池に貯め自家消費している。国は営農型太陽光発電の普及を推進しており、現在課題を抽出、栽培作物の偏りも発生しており、遮光率が高く、手間のかかりにくい作物が選ばれている。農転許可件数は全国で2,600件まで増加しているが、営農者や地域住民の認知度・理解度が不足、パネル下での営農に関する情報や現状でのメリットが明確ではない状況。地元農業法人との連携し、その土地の気候にあった作物を推進、中規模・大規模生産を行う。耕作放棄地、耕作放棄水田が増えている中、転用を計り、自治体、企業とのコラボで営農、脱炭素社会に向けての「電気の省エネ化」を進めている。地方創生に貢献するために都市部の企業が地方に投資し、売電だけではなく、営農型発電により雇用・経済への貢献、省エネ、脱炭素化に貢献できることを将来的に進めていきたい。次世代ソーシャルファーム構想も進めたい。

 

 

 

静岡県立大学 食品栄養科学部 環境生命科学科 教授 谷 晃氏

『 植物生理生態学から見た営農型太陽光発電のメリット・デメリットと農業の持続可能性 』 

 

静岡県内の営農型太陽光発電の導入状況は2013年に6件、2019年では114件となっており、3,771ヘクタールの農地面積となっている。主な作物はサカキ、お茶、ミョウガ、ベリー類。植物には光合成が必要であり、光合成光量子束密度(PPFD)の値を使用する。植物の光飽和点は300~600でそれ以上の日光があるため、余剰な光は発電に回せばよいという理論になる。しかし、植物によって光飽和点は異なり、 太陽光発電パネルを利用した場合遮光率によっては光飽和点に届かない場合もある。太陽光発電のFIT制度により、科学的根拠がないまま設置が進んだため、科学的データを蓄積し、栽培によって適合する植物、何とかなる植物、無理な植物を示すための実験を実施した。水田での実験結果は太陽光発電では成長が遅れ、米粒が小さい傾向にあった。お茶の場合萌芽期は早く、重量は多い結果となった。又、放射冷却を抑制できることから晩霜害の防止にもつなっがる。キウイフルーツの葉の光合成特性としては最大光合成速度、光飽和点、光補償点とも低かった。尚、早生ミカンでは夏季の日射による果皮の変色低減、サトイモの葉の変色抑制がみられた。営農型太陽光発電のメリットとしては売電収入、6次産業での活用、地域への供給、高温の遮光による緩和、霜害の抑制がある。デメリットとしては冬場の光合成低下、農業委員会での証人が必要で手続きが煩雑。 光産卵フィルムによっては葉物野菜では生育の改善がみられ、周年生産できる可能性がある。

 

 

 

 

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