第158回「 産学官交流 」講演会(静岡理工科大学)
報告
静岡理工科大学様にご協力いただき、第158回の講演会を開催しました。
今年度の3回目産学官交流講演会は静岡市産学交流センター(B-nest)を会場として開催いたしました。今回は静岡理工科大学 大学院 理工学研究科静テム工学専攻 教授 峯田克彦氏による「駿河湾・海洋DX先端拠点化計画と環境ゲノミクスからの挑戦」、同理工学部 物質生命科学科 教授 吉川 尚子 氏による「産学官連携によるクルマエビ陸上養殖への取り組み」の講演がありました。
静岡理工科大学 大学院 理工学研究科システム工学専攻 教授 峯田 克彦 氏
『駿河湾・海洋DX先端拠点化計画と環境ゲノミクスからの挑戦』
峯田教授は静岡県三島市出身で、東京大学農学部で修士課程修了後、国立遺伝学研究所、北海道大学、理科学研究所、米国シカゴ大学で研究員として従事。2024年11月から「駿河湾海洋DX先端拠点化計画」の招聘研究者として現職についている。又、MaOI機構の副研究所所長も務めている。駿河湾・海洋DX先端拠点化計画の概要、スケジュール、大学の連携、マリンインフォマテックスの取り組み、スマート水産分科会、ブルーカーボン分科会、海洋関連機器分科会による共同研究を推進する。環境ゲノミクスの研究ではゲノム解析技術を用いて海中の見えない生き物を観測することができる。又、絶滅危惧種の発見、見つからない隠れた生物の検出に利用できる。環境DNAによって、DNAをバーコードにして簡便に種を検出、それにより複数の生物種を同時に検出できるようになった。駿河湾での環境ゲノミクスはサクラエビ、シラス、キンメダイ、タカアシガニ等、ゲノム配列が決定し、大量な遺伝情報を集めることで漁獲資源量の把握、最適な漁獲航路の提示、漁場の最適化・予測が出来るようになり、漁獲作業の効率化、高収益化が可能となる。今後サクラエビの持続的でより効率的な漁業を目指す。

静岡理工科大学 理工学部 物質生命科学科 教授 吉川 尚子 氏
『産学官連携によるクルマエビ陸上養殖への取り組み』
クルマエビにおけるeアミノ酸の整合性機能、生理機能について継続研究をしている。かつては動物にはeアミノ酸は存在しないと言われてきた。が近年あらゆる動物にeアミノ酸が存在することが明らかになった。特に甲殻類や貝には多量のeアラニンが存在する。動物でアラニンラセマーゼが存在する発見は世界で初めてだった。これをきっかけにクルマエビのアラニンラセマーゼ研究を極めることとなる。次に生理機能の研究をする。Dアラニンはどこに分布しているのか?この分析により新たな発見があった。Dアスパラギン酸があることが解る。Dグルタミン酸は動物組織では検出されたことが無い。オスの細胞だけに見られた。クルマエビの生殖機能に重要な役割があると推測し、現在はこの研究を中心に行っている。飼育海水の温度によってDグルタミン酸の量は温度が高くなるにつれて卵巣が活発に活動することは解っており、オスも水温により精巣が活性することが明らかとなった。オス・メスとも眼底切除と水温を22度まで上げることでより生殖におけるDグルタミン酸が多くなることが解った。体調が80mmほどになってようやくDグルタミン酸が生成された。浜名湖でクルマエビの放流を実施しているが、年々漁獲高下がっているため、今後の研究が難しくなっている。そこで新たなクルマエビ生産システムの提案として、マリンインフォマティクス研究機構の研究として「IoT/AIを駆使したクルマエビの次世代型開発」を通じて今まで研究の手伝いをしていただいた団体と一緒に取り組んでいきたい。陸上養殖のメリットして環境に大きく作用されない、閉鎖循環式の場合は汚水をろ過循環するので環境への負荷が軽減、感染症の蔓延を防げる、遊休地を活用することができる。クルマエビの養殖のほとんどが海面養殖であり、クルマエビの陸上養殖のメリットは感染症の広がりを防ぐことができる。クルマエビは飼育が難しい(砂を使うため重労働になる、共食いがある、病気に弱いため)。陸上養殖の技術が確立されたら県内の遊休地を利用して共同研究企業と進めたい。そして新たな静岡県の産業として創出したい。海洋DXの研究としてはこの4年間では難しいが、ゆくゆくは養殖のスマート化を行い、いろいろな方が参入できる技術開発ができればと思う。
