第161回「移動産学官交流 」講演会(静岡農業高校)報告 

 

 

 

主催:静岡市清水産業・情報プラザ(指定管理者: 静岡商工会議所)

共催:新産業開発振興機構、静岡県農業高等学校校長会

 

静岡県立静岡農業高等学校にご協力いただき、第161回の講演会を開催しました。

今年度の6回目最後の産学官交流講演会は静岡県立静岡農業学校にて「移動産学官交流講演会」として実施しました。静岡県立磐田農業高等学校 メロン栽培研究班による「経験と勘に頼らないメロン栽培を目指した研究」、株式会社青木農園 代表取締役 青木 文優 氏による「150年の歴史と最新技術のハイブリッド型農業」、静岡大学 生命資源科学科教授 鈴木 克己 氏による「ハウス栽培の野菜の収穫を上げるCO₂施用技術」の発表・講演がありました

 

 

< 挨拶>

静岡県立静岡農業高等学校 校長 新林 章輝氏

 

今回の高校生による発表は県内で高く評価された磐田農業高校のメロン栽培研究の発表であり、産学官交流の輪に高校生が加わり、直接取り組みを披露できることは、次世代の育成において極めて貴重な機会であるとのこと。現在、全国的な少子化の影響で高校生数は減少しており、静岡県内の農業高校生も5年で約150名減少した。これを受け、県内では高校の再編(グランドデザインの策定)が進んでおり、静岡市内でも県立高校の統合・減少が予定されている。今後の展開として、社会情勢が変化する今こそ、専門高校(農業高校、商業高校、工業高校)は地域の課題解決や人材育成の拠点としての役割を強める必要がある。地域との連携強化 地域貢献を推進し、さらなる連携を図る。専門高校の重要性を広く発信していただき、今後とも変わらぬご支援とご協力をお願いしたい。

 

 

 

 

 

 

<学生発表>

静岡県立磐田農業高等学校 メロン栽培研究班

『 経験と勘に頼らないメロン栽培を目指した研究 

 

 静岡県立磐田農業高校 メロン栽培班による発表内容は5つのポイントで分かりやすく発表された。1. 研究の背景と目的では、静岡県特産の温室メロンは、厳しい出荷基準がある一方で、生産者の高齢化と減少が深刻な課題となっている。そのため、今回の研究の目的として「経験と勘」に頼る栽培技術をデータ化し、誰でも高品質なメロンを栽培できる手法を確立することで、新規就農者の確保を目指すこと。2. 研究1ではベテラン農家との比較検証をする。内容として品評会1位の経歴を持つ篤農家(新村さん)の管理を参考に、学校での栽培試験を実施。結果として新村さんの管理を模倣することで、学校でも出荷基準を満たすメロンの生産が可能になった。但し、新村さんのメロンはネット(網目)が緻密だったのに対し、学校産は「縦割れ」が激しく、樹形も異なる(寸胴型)という課題が見つかった。3. 研究2では冠水量による影響の調査を実施、仮説としてネット形成期の土壌水分の乾燥が「縦割れ」の原因ではないかと考え、標準区と多冠水区(1.2倍)に分けて比較。その結果、土壌水分量に差は出たものの、果実の大きさ・糖度・ネットの密度において、両区に有意な差は見られなかった。定植36日目以降の対策では、すでに成長段階が移行していたため影響が出にくかったと推察された。4. 研究のまとめと考察では、結論としてベテランの冠水方法を真似ることで一定の品質は確保できるが、ネットの美しさや樹形を制御するには、より早期(定植直後)からの土壌水分管理が重要である可能性が高い。今後の展望として、次回の研究では、定植直後から冠水条件を変え、理想的なネット形成と樹形を導き出す「最適な冠水量」を追求する。このデータ化を通じて、新規就農者が参入しやすい環境づくりに貢献したい。

 

 

 

 

 

  

<企業発表>

株式会社青木農園 代表取締役 青木 文優氏

「 150年の歴史と最新技術のハイブリッド型農業 」

 

静岡市清水区で150年の歴史を持つ青木農園・青木氏による「伝統(歴史)と最新技術のハイブリッド型農業」をテーマとした講演内容として、1.青木農園の概要と歩み、2.既存農業の効率化とデジタル化、3.非効率の先にある「ロマンとスピリット」についてが挙げられる。1.青木農園の概要と歩み、歴史:約450年前から続く家系で、150年前に和歌山から苗木を運んだことで柑橘栽培が開始。多角経営: 地形を活かし、日当たりの良い場所に「みかん」、風の当たる場所に「お茶」、急斜面に「タケノコ」を植える複合経営を100年前から実践。6次産業化: 40年前から加工品(マーマレードやコンポート等)を製造。現在はJA、直販、加工品のバランスを重視した経営を行っている。2. 既存農業の効率化とデジタル化:既存業務の効率化とデジタル化では「勘と経験」に頼るだけでなく、データの可視化によって組織的な農業を目指している。基盤整備: トラックや重機が入れる平坦な畑を整備し、労働力を半分以下に削減。安全性も高め、新規就農者が働きやすい環境を構築。補助管理アプリの導入: 作業内容、薬剤、気象データ(降雨量、日照時間等)を詳細に記録。メリット: 異常事態の早期発見、品質の検証、技術の継承をスムーズにし、従業員のスキルアップに繋げている。3. 非効率の先にある「ロマンとスピリット」効率化を追求する一方で、あえて手間のかかる「耕作放棄地の再生」に情熱を注いでいる。大開拓プロジェクト: 30年間放置された約4,500坪の段々畑を、自らの手で切り拓き、蘇らせる活動。農家のロマン: 「品種と土地に勝る栽培方法はない」という教えに基づき、かつて最高品質のみかんが採れた良質な土地に、最新品種を掛け合わせる挑戦。農家のスピリット: 先祖が手作業で山を切り拓いた開拓精神を忘れず、「稼げる農業」と「ワクワクする農業」の両立を目指す。「効率の追求」と「夢のある挑戦」を掛け合わせることで、若い世代が農業に魅力を感じるモデルを実践。講演の最後には、3月に実施予定の苗木の定植イベントへの参加を呼びかけ、地域と共に歩む姿勢を示しました。

 

 

 

 

  

 

静岡大学 農学部 生命資源科学科 教授 鈴木 克己 氏

ハウス栽培の野菜の収穫を上げるCO₂施用技術 

 

鈴木教授による、施設園芸(ハウス栽培)における「CO2施用(二酸化炭素を植物に与えること)の効率化と可視化」に関する講演内容となっている。1. 農業におけるCO2施用の重要性と現状の課題では植物は光合成によってCO2を吸収し、デンプン(糖)を作って成長する。農業生産力を上げるには光合成の促進が不可欠。ハウス内のCO2不足: 密閉された冬のハウスでは、植物がCO2を吸収し尽くしてしまうため、日中の濃度が外気(約400ppm)の半分以下(約200ppm)まで低下し、成長の妨げとなっている。従来の対策: 灯油ボイラーを燃やしてCO2を供給しているが、ハウス全体を温めるため、隙間からガスが漏れ出す「無駄」が多いのが課題。2. 安価なCO2濃度分布の測定技術(pH推定法)ハウス内のどこにCO2が溜まっているかを把握するには多数のセンサーが必要だが、機器が高額(1台5万円等)であるため、安価な手法を開発した。手法: 水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性)がCO2(酸性物質)を吸収すると、pHが低下する性質を利用。成果: 安価な溶液を各所に配置し、3時間後のpH変化を測定することで、ハウス全体のCO2分布を可視化することに成功した。これにより、CO2が上昇気流で上部に溜まりやすく、植物付近では効率よく吸収されている実態が判明した。3. 「化石燃料由来の炭素」を用いた吸収率の可視化「入れたCO2が本当にどれだけ植物に吸われたか」を特定するため、放射性同位体(14C)を用いた年代測定の技術を応用した。原理: 石油などの化石燃料には14Cが含まれていない。これを利用し、植物体内の炭素のうち「14Cが含まれていない割合」を調べることで、灯油ボイラー由来のCO2をどれだけ吸収したかを特定できる。実験結果:局所施用ではイチゴの株元に直接CO2を送ることで、効率的に吸収させ、収量を向上させた。高濃度施用と節電: トマトの実験では、早朝に1000〜1500ppmの高濃度施用を行うことで、光合成を大幅に促進。また、ボイラーの熱が暖房代わりになり、メイン暖房の燃料節約にもつながることが分かりました。鈴木教授の研究は、目に見えないCO2の動きを「pH測定」や「炭素の由来分析」によって可視化し、より少ないエネルギーで最大の収穫を得る「効率的な局所施用技術」の確立を目指すもの。今後は屋外栽培への応用も視野に入れた、持続可能な農業技術としての発展が期待される。

 

 

 

 

 

休館日のお知らせ
★2/11、2/15、2/23 ★3/15、3/20

セミナー&イベント

  • 4/5F:静岡商工会議所
  • 6F:新産業開発振興機構